コスプレ写真投稿サイトやコスプレ専門アプリが失敗する訳
コスプレイヤー専用写真投稿サイト、通称、コスプレギャラリー。
コスプレイヤー専用コミュニティアプリ、通称、コスプレアプリ。
ちょこちょこと表れては消える、あるいは、鳴かず飛ばずのまま収益化ができず、運営が放置、もしくは投げ出す、黒歴史製造マシーンこと、ダメサイト&ダメアプリ。
コスプレ界隈は日に日に賑わい、コスプレ業界は右肩上がりに市場を伸ばしており、芸能界にも進出した人気レイヤーや独立・起業したレイヤーもおり、各メディアでもコスプレとコスプレイヤーはエンタメ系の1ジャンルとして確立し、その存在は益々大きくなっております。
それにも関わらず、コスプレ専用&コスプレ専門サイトやアプリは今一つ盛り上がらず、当該ユーザーはともかく、他メディアや第三者はその存在を知らないまま、ひっそりとしたコミュニティが各処で乱立、そして、孤立しています。
なぜ、コスプレやレイヤー個人、コスプレ業界、コスプレ市場は盛り上がっているにも関わらず、コスプレ専門と謳ったサイトやアプリは失敗しているのでしょうか?
各々のサイトやアプリに一定数のユーザーは存在しています。
しかし、各々、決して上手くいっているとは言えない状況にあります。
上手くいっていない理由は、ユーザーがマイノリティ・レイヤーに限られ、クローズド環境に伴うエコーチェンバー現象による強力なフィルターバブルが働き、第三者ユーザーを寄せ付けない排他的コミュニティが形成されているからです。
意味が分からない?
それでは簡単に説明いたしますと、つまらない、からです!
コスプレイヤーとコスプレファンの乖離が激しいコスプレ専門メディア
コスプレ専門サイトは大きく分けて3つのタイプに別れます。
- レイヤー同士の内輪コミュニティ向け半クローズドSNS(レイヤー交流会)
- 第三者閲覧ユーザー向けギャラリー(コスプレ写真展示場)
- 懸賞や特典を配したコスプレ写真賞レース(コスプレ写真品評会)
コスプレイヤー向け趣味友コミュニティサイト(SNS&アプリ)
「1.レイヤー向けコミュニティSNS」については、コスプレという趣味を介したコミュニティですから、登録ユーザー(レイヤー)数が確保されていれば、それなりに可動します。
但し、あくまでも趣味という嗜好分野の為、個人の感覚による合う/合わないが大きく作用し、時にはトラブルに発展するケースがあります。
同様に、趣味ですから生活環境に依存する為、デッドアカウント化が激しくなります。
レイヤー仲間同士の遣り取りがメインですから初心者レイヤーにとっては参加し易いメリットがあります。
レイヤー同士のQ&Aやイベント情報、合わせ募集、好きな原作や趣味のコミュニティ、フリマ他、いわゆる昔ながらの趣味特化型SNSのコスプレ版です。
最も代表的なのが「コスプレイヤーズアーカイブ」です。
OpenPNEタイプ、つまり、mixiスタイルのSNSで、本来はログインユーザー同士の完全なクローズドSNSです。
コスプレ写真閲覧など、レイヤー以外のユーザーアクセス獲得の為、一部コンテンツをオープン化し、いわゆる仮想的なコスプレ展示会を設けつつ、メインコンテンツはレイヤー同士の交流になります。
スマホ向けのアプリは、そもそもアプリというソフトウェアはその仕様上、ログインユーザーに限定される為、ほぼSNSと同義になります。
実の処、このタイプのコスプレ特化サイトが一番“マシ”です。
マシというだけで、面白味はありません。
マシな理由は、趣味語りしたり、気の合う仲間探し、情報交換において、趣味友探しのレイヤーにとっては好都合な環境だからです。
面白味がない理由は、極めて排他的なコミュニティであるが故、エンターテイメント性が皆無なので第三者が入り込む隙がなく、学生の内輪乗りである為です。
コスプレ写真詰め合わせサイト(コスプレ画像保管所)
「2.コスプレ写真ギャラリーサイト」、これがコスプレ特化型サイトを“つまらなく”した元凶です。
会員離れ(デッドアカウント化)に悩まされていたCureは、ライブドアを吸収合併したNHN JAPAN(現LINE株式会社)運営の下、海外製の新興SNS(FacebookやTwitterなど)への対応とマルチリンガリゼーション(多言語化)を意識して海外レイヤーを取り込もうとして作ったサブサイト「WorldCosplay」がギャラリー化の発端で、ネット環境の向上から3,000pixelの画像投稿を可能にしました。
当時NHN JAPANは、TV CMによるユーザー囲い込みというAmebaが取っていたメディア戦略をそのまま踏襲し、LINEアプリを国内で成功させ、コミュニティ分野で破竹の勢いを誇っておりました。
時同じくして、韓国レイヤーによるメディア戦略を目論見、コスプレ業界にマルチリンガルを持ち込みました。
その後、Webページの新しい表現法としてドラフト案が話題となっていたHTML5を活かしたビジュアル的にギャラリー特化した「AMPLE!」が登場しました。
AMPLE!はベンチャーならでは曖昧な手法で、WorldCosplayのマルチリンガリゼーションによる海外レイヤーの取り込みを行い、著名(?)なレイヤーによるコスプレ写真美術館を作り上げました。
CureとWorldCosplayは間もなく、ピクシブ子会社キュア株式会社に運営を譲渡し、こともあろうか、CureをWorldCosplayに一本化し、後発のAMPLE!のギャラリー化を推し進めました。
これは親会社ピクシブによるイラストギャラリーとほぼ同じスタイルを踏襲したサービスを意味します。
WorldCosplayやAMPLE!による、既存フォロワーの多いレイヤーによる加工写真の展示場という、閲覧者(閲覧ユーザー)の乏しい空虚なコスプレギャラリーがマルチリンガル化され、趣味レイヤーも見放す、トラフィックだけが無闇に多い(アクション率の乏しい)サイトが出来上がってしまったのです。
この多言語化されたギャラリーサイトは、写真だけで善し悪しを判断できる海外でのみ、ある程度のトラフィックを得てはおりますが、アクション率は低い傾向にあります。
その理由として、コンテンツがコスプレ写真以外に無いからです。
コスプレ写真賞レースサイト(コス写真ランキング懸賞サイト)
海外製新興SNSの隆盛に伴い、半クローズドSNSの衰退、ギャラリー化したコスプレサイトに追い打ちをかけるように、スマホの普及率が後押しし生まれたのが「3.コスプレ写真品評会アプリ」の登場です。
2013年後半時点でスマホ普及率は50%近くに達し、一気にスマホの普及率が伸びました。2014~2015年にはスマホユーザーが支配的になり、2016年辺りからコスプレ専用アプリが登場しました。
peep(閉鎖)、coscrea(閉鎖)、COSPO、コスらぼっ!、Claps!ほか、幾つか存在します。
アプリはそのままソフトウェアを意味しますからログインを伴います。従って、ショッピングやコンテンツ利用でもない限り、必然的にSNS要素が生じます。ですから、基本的には「1.レイヤー向けコミュニティSNS」のスマホ版と思っても問題ありません。
COSPO、コスらぼっ!、Claps!(アプリリリース順)で見ますと、コスらぼっ!が最もSNS色が強く、WorldCosplay統合前のCureにオープンコミュニティと情報配信がセットされたイメージです。
COSPOは典型的なファッションモデル系アプリのコスプレ版といったところで、企業タイアップがメインとなったランキングサイトです。
Claps!はコスプレイヤーズアーカイブ運営のアプリで昨年6月に登場した比較的新しいサイトです。いわゆる、オーディションサイトです。
COSPO、Claps!共に広告代理店による意向が強く絡んでいる為、懸賞(特典)によるコスプレ写真(動画含む)品評会要素が強くなっています。
上記3アプリで比較してみますと、コスらぼっ!が一番ユーザーフレンドリーですが、Cure(WorldCosplay統合)、COSTYPE(過疎)、L’s Salon(閉鎖)、LayerCloud(閉鎖)系の流れなので厳しいでしょう。
一番エグいのがClaps!です。懸賞(特典)をオーディションと見なし、射幸心を煽っているのが実に顕著です。
アプリの場合、モバイルOSの配布元(App StoreやGoogle Playなど)に収益の30%が手数料となる為、ゲームでもない限り、運用資金を外部調達するのが専らとなり、これが広告代理店経由となる為、ユーザーを囲っておく必要が生じます。
ユーザーを囲い込む手法として懸賞(特典)が不可欠となります。
囲い込み手段であるはずの懸賞(特典)を、オーディションに見立てるのは、なかなか悪辣で、一昔前のモデル業界で騒がれたオーディション詐欺やスカウト詐欺に近しい嫌らしさを感じます。
いわゆる、イイネや拍手など、FavoriteやLikeボタンのアクション数でランキングされる形式ですから、コスプレ品評会の域を出ません。
品評会そのものを嫌うレイヤーもいます。
従って、一律化した評価システムを導入したアプリは、ユーザーを選んでしまう傾向があるのです。
ランキング、というもの自体が悪い訳ではありません。ランキングはアクセス導線を増やすので、これ自体が悪いのではなく、集計法に問題があるのです。
集計法を考察しないで実施するとランキング上位者は常に一定化し、品評会にさえなれません。
上記コスプレ専門サイト以上の問題を抱えるICO(Initial coin offering)
ICO(Initial coin offering)と言っても、多くの方には馴染みのない言葉だと思います。
Wikipediaから引用しますと「企業等がトークンと呼ばれるものを電子的に発行して、公衆から法定通貨や暗号通貨の調達を行う行為を総称するもの」とあります。
ざっくり説明しますと、IPO(株式公開)のデジタルトークン版、仮想通貨(正確には暗号通過)による資金調達、です。
なぜ、急にICOが? 暗号通貨が? と思う方も多いかも知れません。
その理由が、「2.コスプレ写真ギャラリーサイト」で紹介したCure WorldCosplayとAMPLE!です。
時系列的には、AMPLE社がAMPLE!コインでICOをスタート、Cure WorldCosplayがコスプレトークンを謳い、追い掛けた、そんなところです。
実際には、Cure WorldCosplayのコスプレトークンはスタートし、AMPLE!は頓挫し、サイトそのものが閲覧不能となっております。
結論から先に言っておきます。
コスプレトークンは、コスプレイヤーの役には立ちません!
ついでに、コスプレファンにとっても魅力がありません。
少なくとも、現行及び現在公開されている内容のままであれば、コスプレトークンは一部の人達のちょっとしたマネーゲームでしかありません。
正に、コスプレイヤーもコスプレファンも置いてけぼり状態のきな臭いサービスです。
後述しますが、明らかに流行に乗っただけの運営サイドの事情でしかありません。
Cure WorldCosplayがコスプレトークンに触れたのは、2018年初頭、中川大輔氏が執行役員になった後からです。
レイヤーの皆さんであればお分かりの通り、当時既にCure WorldCosplayは、レイヤーにとって登録必須の媒体ではなく、コス暦が長い方であれば、以前は使っていた、あるいは登録はしている、ギャラリー代わりに投稿してた、といったニュアンスではないでしょうか?
Cure WorldCosplayは、コンテンツがログインユーザーであるレイヤーのコスプレ写真しかありませんから、マネタイズ(収益化)が貧弱です。
統合前のCureであれば国内ユーザーがメインですからイベントも打てましたが、国内レイヤーより海外レイヤーを重視した結果、イベント動員も見込めなくなってしまい、タイアップオンリーとなってしまった訳です。
急に降って湧いたようなICOの発案も、前年2017年5月末に登場、巷の話題をさらったVALU当たりに触発されたのでしょう。
特に、同年秋に発表されたAMPLE!コインには堀江貴文氏が絡んでおります。同氏はVALU設立に関わり、同社の取締役にもなっておりました。
VALUは個人を株式に見立て、資金調達をビットコインでまかないましたが、19年5月末に成立した改正資金決済法によりカストディ業務不能から本年3月いっぱいでサービスを停止しました。
AMPLE!の頓挫は、欧州の経済通貨問題委員会によるICO規制草案に端を発し、欧州証券市場監督局による提言などを受け、ヨーロッパでの要件を満たせないためです。
一応、Cure WorldCosplayのコスプレトークンは、VALUの疑似株式と異なり、ユーティリティトークンとして流通性のあるレイヤー独自のCoin発行により売買が可能とのことですが到底、利便性(優位性)が感じられません。
国内外レイヤー共に、コンテンツの売買は既に成立しており、全く訴求力がありません。
そうです、このコスプレトークンというICOは、運営元であるキュア株式会社の資金調達以外のなにものでもありません。
仮に資金調達が上手くいっても、恐らく、なにもコンテンツは出てこないはずです。精々、国内外イベントとのタイアップ程度でしょう。
コスプレ専門サイトが失敗してしまう内的理由
実に簡単な理由です。
マネタイズ(収益化)できない! からです。
コスプレ業界は、2兆円以上の市場規模、と謳われております。
しかしこれは、世界市場において、且つ、関連市場を含めた上でのお話しです。
コスプレ市場における闊達な売買は、衣装やコスメ、カラーウィッグ、カラコンほか、コスプレに必要な小道具が主流であり、コスプレイヤーが作り出したコスプレ作品集ではありません。
一部コスプレイヤーのタレント化により、広告塔としての市場も生まれてはいますが、これはファッションモデルやYouTuberのタレント化と同じ枠組みであり、コスプレ由来ではあるものの、コスプレ独自の市場とは言えません。
コスプレイヤーというユーザーが多くなった為、そこに市場価値を見出したのでしょうが、残念ながら現行のコスプレ媒体はインプレッションに基づく公告媒体以外に価値はなく、コスプレ界隈に独自コンテンツを提供できる程のアイデアを持っている運営者はいません。
AMPLE!やCure WorldCosplayによるICOは、両者共にグローバリズムを意識し過ぎたコンテンツの空洞化を埋め合わせるための繋ぎ資金調達に過ぎません。
現に、ICOによるコスプレ業界における新コンテンツの提唱はなく、既存取引を暗号資産に置き換えるだけの絵しか描けていません。
広告媒体としてのみ運用して行くだけならコスプレ専門サイトやアプリも運営可能です。
トラフィックに限界はありますが、アクティブユーザーがある一定数存在していれば広告媒体としては成り立ちます。
懸賞や特典付きサイトなどはその最たる例であり、アクティブユーザーを得る為の広告媒体と理解しておけば分かり易いでしょう。
コスプレ専門サイトが失敗してしまう最大の理由
一番の理由は、コスプレファンがレイヤーのみに限定されているからです。
要は、アクティブユーザーがコスプレイヤーのみに集約され、メインコンテンツがコスプレ写真のみである為、つまらない、のです。
メインコンテンツであるコスプレ写真の閲覧ユーザーの大半は、非コスプレイヤーです。
つまり、トラフィックの多くを非レイヤーに頼っているにも関わらず、ユーザー権限が閲覧のみである為、そこには何も生まれません。
いいねボタンを押すだけなら何も専門サイトや専門アプリである必要性はなく、レイヤー本人のTwitterやFBに行くだけで済みます。
しかし、実際には専門サイトや専門アプリは、レイヤー本人のアカウントへのアクセス導線すら担っていません。
画像検索すらできない為、多くの場合、レイヤー本人アカウントへのアクセス導線は別途存在し、専門サイトや専門アプリは非レイヤーユーザーからすると、ちょっとした過去のギャラリー閲覧にしかなりません。
元々、レイヤー向けSNSというスタイルを踏襲しているサイトやアプリが全ての為、レイヤー向けの広告媒体と情報しか存在せず、レイヤーと非レイヤーの乖離が激しく、メディアとしての広がりもありません。
トラフィック目的の為、半クローズド半オープンSNSにしてはいても、オウンドメディアたり得ないコンサバな傾向がどの運営も等しく抱えています。
コスプレ専門サイトやアプリは、これからも存在し続けるでしょう。
しかし、そのほとんどは広告媒体の域を出ず、初心者レイヤーの情報収集とフォロワーの乏しい趣味レイヤーの仲間探しに終始するでしょう。
データベース以外のコスプレ独自のコンテンツを開発・企画できたサイトやアプリのみ、再びTwitterからレイヤーもコスプレファンも戻ってくることでしょう。
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