コスプレ写真で忘れられがちな目(瞳)のレタッチに気を配ろう
以前投稿した記事「コスプレイヤーは目が命!目のケアを普段から心掛けましょう」でも触れておりますが、コスプレイヤーにとって目(目力)は重要なポイントになります。
目の印象で魅力は大きく異なります。
役者ではありませんからリアルにおいて目力が強い必要はありません。
あくまでも、写真(コスプレ)上でのお話しです。
実際、ポートレート写真や顔写真、ファッションモデルやタレントの写真などでは目(瞳)のレタッチは必要不可欠で、これを施していない写真が商業媒体に掲載されるケースは稀です。
目(瞳)の未加工写真が掲載されるとしたら、精々タレント本人のSNSアカウントに投稿された自撮りくらいなものです。
プロのモデルや女優でさえ、その写真において未加工がほとんどない程、目(瞳)のレタッチ(写真加工)は大切なのですが、どういう訳か多くのレイヤーさんのコス写真では、あまり触れられておりません。
これには理由があります。
コスプレ写真では、レタッチすべき情報量が非常に多いのです。
コスプレ衣装や造形物、ウィッグ、カラコンの発色や見え方、皺、ほつれなど、コスプレにまつわる情報に加え、被写体(モデル)としての肌質やポージング、場合によってはウェストのくびれや足の長さ、小顔ほか、修正・加工を施そうと思えば、至る所全てをレタッチする必要が出てきます。
結果、レタッチ箇所が多い為、目(瞳)のレタッチ優先度は低くなり、カラコン頼みで放置となるケースが多くなります。
修正・加工に時間をかけると返っておかしくなる!
コスプレ写真にありがちなのですが、公開に耐えられるレベル、あるいはレイヤー本人が納得いくレベルにするため、レタッチ作業に手間取ってしまい、コス写真1枚当たりの作業時間が長くなってしまうケースがあります。
これは何もレイヤーだけに限らず、撮影者(カメコ/カメラマン)にも同じことが言えます。
通常のポートレートや風景写真を撮影するカメラマンであれば、写真の出来栄えに関して、一定の品質ラインを模索していることもありますから、RAWデータから懸け離れた修正・加工に自制が働きますが、コスプレイヤー本人となるとニュアンスが全く異なります。
遣り過ぎてしまう!
レイヤー本人の経験が乏しい場合や過去に加工したコス写真の反響があった場合などにこのケースがよく見られますが、レタッチを遣り過ぎてしまい、絵になってしまう、それどころか、“不気味の谷”に迷い込んでしまうこともしばしば見られます。
これはレタッチの技術がないからではありません。
ひとえに、時間を掛け過ぎてしまうから起きてしまう現象です。
この現象を筆者は、“暇妄想(Himagine)”と呼んでおります。
この暇妄想現象を攻略し、違和感なく、且つ、レタッチ作業が時短できる解決策が……
コス尊い!!流雑コラ風レタッチ術!!
雑コラ!
雑なコラージュ画像の意で別名クソコラ、なんJ発祥と言われておりますが、昔からある大雑把なコラージュ画像の総称です。
文章で説明するよりも下の画像を見れば分かり易いかと思います。


雑ですね~!
正確には、雑なように見えます。
しかし実際には、かなりしっかりと切り抜いてからコラージュしてますから、作業そのものは雑ではないんです。
これは、わざとコラージュ画像を“馴染ませない”手法なのです。
謂わば、雑コラを狙った(演出した)雑コラ風味の画像です。
コラージュそのものが雑、というのが雑コラであり、画像処理作業そのものが雑という訳ではありません。
勿論、画像処理そのものが雑なものも雑コラですが。
実は最近のフォトレタッチソフト、PhotoshopやElements、先日ご紹介したLuminar 4などの写真編集ソフトは優秀になり過ぎて、いわゆる、昔ながらの雑コラを作るには、返って手間がかかる、という不思議な状態になっています。
例えば、先日の記事「コスプレイヤー必見!PhotoshopとLuminar 4の搭載AIの違いを見てみましょう!」でも書いてあります通り、不要なオブジェクトの削除から必要なオブジェクトの切り抜きまで、大凡、AI処理に任せることができるのです。
従って、雑コラ感を出すためには手作業が必須となり、作業時間が増えてしまいます。
実は、ここまでの説明に大きなヒントが隠されています。
昨今の雑コラが「作業はそれなり(丁寧)に、コラージュを雑に」で作業時間が多少増えるのであれば、「作業は雑に、コラージュをそれなり(丁寧)に」とすれば、時短が図られ、“奇妙なコス写真にならない(なりにくい)”、となるわけです。
では、本記事の主題の通り、目(瞳)へのキャッチライトの加工を、実際にやってみましょう!
手早く雑に、しかし、馴染ませることを意識する(時短)!
コスプレ写真のレタッチにどれくらいの時間をかけてますか?
5分ですか? 10分ですか? 30分ですか? 1時間ですか?
まさか、1枚のコス写真に2時間も3時間も、それどころか半日もかけてませんよね?
仮に5分で済ませたとしても、休みなしで1時間当たり12枚しかレタッチできません。
実際、コスプレをした時に撮影する写真の枚数は、10枚や20枚どころではないはずです。全ての写真をレタッチし、公開するわけではありませんし、勝負所の奇跡の1枚に手間暇かけてレタッチするのはアリです。
しかし、これでは公開できる枚数が限られてしまいます。
そこで、勝負所の奇跡の1枚以外のレタッチは、“5分以内”を目安に済ませるようにしましょう。レタッチそのものに慣れていない方であれば、目安は20分以内、としておきましょう。
それでは本記事のメイン『目のキャッチライト』をやってみましょう。
キャッチライトとは、いわゆる、目のキラキラ、です。
これが、あるのとないのでは、印象ががらりと変わりますから、注意して行きましょう。
まず、素材ですが……

ウィキペディア英語版の「Human eye」に掲載されている写真です。
いいですねッ!
見事に、目が死んでいます。いわゆる、レ○プ目(ベタ目/マグロ目)、です。
生々しいにも関わらず、キャッチライトが一切入っていない、参考資料のためのお写真、といった雰囲気が実に“いい”です。
さて、そのままだと不気味でキモいのでLuminar 4で適当にエフェクトとパラメータをいじって、エクスポートします。

Luminar 4での処理は30秒とかかりません。
細かい数値やエフェクト処理の仕方など、この際、一切不要です。直感的にちょいちょいといじってやれば、上のような画像になります。
エクスポートした画像をPhotoshopで読み込み、いよいよキャッチライトを入れてゆきます。
画像はこのままでも構いませんが、やはり全体的にキモいので「覆い焼きツール」で虹彩(黒目の周り)の右側、白目、肌をささっとなぞります。

一見、違いが分かりづらいかも知れませんが、覆い焼きツールでなぞったところが明るくなっています。
虹彩に立体感を出し、白目の毛細血管を薄くし、肌質を滑らかにしています。
とは言え、雑に1度なぞっただけですから大きな違いはありません。
本当に適当にささっとなぞるだけでOKです。
次に、目の色(虹彩の色)を変えておきます。

勿論、色を変える必要はありませんが、コスプレでは“目の色”が大事ですから、着用しているカラコンの発色が、どうしても元キャラのイメージと違う時などに使うと良いでしょう。
今回は、「イメージ」>「色調補正」>「カラーバランス」でブルーの量を少し増やしました。
これで緑寄りの虹彩が、緑掛かった青っぽい瞳に変わりました。
ついでに「イメージ」>「色調補正」>「明るさ・コントラスト」でコントラストをプラスにします。
こうすることで、黒目を取り巻く虹彩の中心に走る模様が強調され、立体感が生まれます。
まるでブラシで描いたようにも見えますが、そんな面倒なことはしてません。
さあ、いよいよキャッチライトです!
新規レイヤーを作成しましょう!(なんと、ここまで追加レイヤーなし!)

作成した新規レイヤーに「楕円形選択ツール」で円形の選択範囲を設定します。
「グラデーションツール」を選択し、白色(#ffffff)に設定、一方の不透明度を0%に設定し、先程の円形の選択範囲に適用します。
段々と透ける円形の丸ができていればOKです。
ごくわずか、「フィルター」>「ぼかし」>「ぼかし(ガウス)」をかけておいても良いでしょう。
ついでに、このレイヤーを複製し、「自由変形」で縮小し、レイヤーの「不透明度」を40%で適用します。
と言うわけで“完成”です。
正味、1分半(90秒)もかからない、雑コラ風キャッチライト・レタッチの完成です!
えっ?
はい、上の画像で完成です。
雑過ぎないか、って?
とても、キャッチライトには見えない?
ただの半透明の白い円にしか見えない??
では、次をご覧ください。
サイズ感(スケール感)を意識したレタッチを知っておく
同じようにキャッチライトをレタッチした画像がありますので、まずはご覧ください。

作業時間5分弱、リアルイラストレーション風に仕上げたレタッチです(遣り方は省略)。
短時間で仕上げておりますから、いわゆる雑コラの類ゆえ違和感はあるものの、一応、馴染ませております。
前述の雑コラ風キャッチライト完成形と比較すれば、明らかにこちらの方が情報量は多くなります。
レタッチには、レタッチを施した者とそれを見る者の“好み(嗜好)”の影響もありますから、どちらが良い/悪いはありません。
あくまでも好みの問題ですから、人それぞれの判断によります。
人それぞれの好き/嫌いの判断によるのですが……
では、1/2のサイズで見てみましょう(あくまでも本記事上の見掛けのサイズ)。


このサイズだと、まだ情報量の違いを認識できます。
従って、好みで判断が分かれるレベルです。
ですが、この時点で雑コラ風キャッチライトの“雑コラ感”は、ほぼ感じなくなっているはずです。
それでは、更にリサイズし、1/4と1/8の、それぞれのサイズも見てみましょう。




どうでしょうか?
1/4サイズの時点で、情報量は“ほぼ一緒”の見掛けとなり、雑過ぎる雑コラ風キャッチライトの方がわずかですが透明感が増します。
そして、1/8サイズになると情報量が多いキャッチライトの方に雑味(濁り)が浮かび上がり、雑コラ風の方が“クリア”になります。
これが“スケール感”を意識したレタッチです。
リサイズは本記事に掲載している見掛け上のサイズです。
元写真のサイズ(大きさ)は変わりませんから、本記事上での見栄えのみで確認してください。
なぜ、雑さとスケール感が必要なのか?
シンプル・イズ・ベスト!
……なんて言うつもりは毛頭ありません。
実はこの手法、絵画のテクニックです。
油絵でもペン画でも点描でも、ある一定の距離以上から見た時、全体として絞まって見える、という錯覚(錯視)を用いた技法です。
絵と写真に共通しているのが、メディアに掲載された時、元絵(元写真)より小さくリサイズ(縮小)されます。
元より大きくリサイズ(拡大)されることはほとんどなく、最大で原寸、多くの場合、縮小されるのが常です。
メディアには、絵や写真を掲載するスペースに限りがあり、大きな原画をフルサイズで載せることができないのです。
従って、縮小して掲載するのが常識となっており、解説や図説でもない限り、原寸を超えるサイズに拡大することはあり得ません。
事実、今回、目(瞳)へのキャッチライトの入れ方というレタッチ法を解説するために、目のどアップ画像を使用しましたが、コスプレ写真というジャンルにおいて、これほど目を大きく写すことはないはずです(RAWデータは別です)。
仮にデータ量が増え、サイズの肥大化が進んだとしても、閲覧するデバイスやディスプレイ、紙媒体のサイズには限界があり、同様に人間の有する有効視野に変化はありませんから、閲覧者が自ら望んで拡大でもしない限り、“見掛け上のサイズ感”に極端な差は生じません。
だからこそ、雑さとスケール感が活き、シンプルな情報の方がクリアに映り、豊富な情報は雑味(濁り)と認識されてしまうのです。
実際のコスプレ写真ではどのような見栄えになるのか?
では、実際のコスプレ写真では、どのような写り方(見え方)をするのでしょうか?
唐突ですが、目がしいたけ(しいたけ目)をご存知ですか?
漫画やアニメにおいて、瞳孔に十字型の光が輝いた表現法の一つで、喜びや興味津々な感情表現をあらわす時に用いられます。
中には、常時、このしいたけ目のキャラクターがいます。
今回は、常時、目がしいたけの代表格『とある』シリーズに登場する「食蜂操祈」というキャラクターに焦点を当ててみます。

上の画像をご覧いただければ分かります通り、見事なしいたけ目です。
現在では様々な特殊な柄付きカラコンも登場しておりますが、残念ながらしいたけ目を表現できるコンタクトレンズはなく、そもそも瞳孔を光らせるようなカラコンは存在しません。
つまり、このしいたけ目をコスプレで表現するには、後付けの写真加工が必須になります。
実際、Twitterで「食蜂操祈 コスプレ」と検索をかけてみますと、加工済みのコス写も幾つか見付かりますが、アニメ表現に寄せ過ぎている(描いている)か、スタンプ加工に二分されます。
食蜂操祈の特徴的なしいたけ目の表現に注力するあまり、表現(レタッチ)が浮いてしまっています。
キャラ表現を優先させた結果、人物写真としてのクオリティを下げてしまっているのです。
いわゆる、雑コラ、に見えてしまっているわけです。
実に、勿体ない、です。
では、本記事で解説して参りました「雑な作業で、しかし、馴染ませる」を意識し、コス写真そのものの印象度を高め、元キャラのエッセンスを高めてみましょう。
まずは、12COMPANY専属のコスプレイヤー、天上てんこ(@_104channn)さんの食蜂操祈コスです。
美しいお写真ですね!
コスプレ写真としても、人物写真としても抜群に出来栄えが良く、コスプレ/写真/被写体(モデル)の魅力が存分に活かされております。
二次元と三次元の狭間、正に2.5次元表現が美しく演出されております。
通常、この時点で追加加工の余地は全くありませんが、本記事の趣旨から特殊なキャッチライトを加えてみます。
元写真

しいたけ目キャッチライト加工

どうでしょうか?
目元の印象が格段に強くなっていると思いませんか?
あっさりと、実に控え目な“しいたけ目”のキャッチライトを加えただけで、他は一切いじっておりません。
作業時間、実に30秒未満でこれ程、印象が変わります。
次に、倉奈(@kurana77)さんの食蜂操祈コスです。
凄まじいクオリティです!
先述のてんこさんの食蜂コスが2.5次元なら、こちらは2.7次元、乃至は2.8次元といった印象で、元キャラを知らない方やコスプレという事実を知らなければ、そのまま実在するモデルさんと錯覚する程のリアリティ&クオリティです。
全く手をつける必要性のない完成されたお写真ですが、本記事の趣旨に沿って加工してみます。
元写真

しいたけ目キャッチライト加工

どうですか?
全体的な雰囲気を維持したまま、目元の印象は強くなっていると思います。
先述同様、サクサクとしいたけ目キャッチライトを追加しただけです。
作業時間は同じく30秒未満です。
目は口ほどに物を言う!
コスプレ写真に限らず、ポートレート写真において目力、目元の印象強さは、閲覧者を惹き付ける訴求力が上がります。
今回のサンプルは、元キャラの特殊なキャッチライトの再現を意図しましたが、純粋にコスプレイヤー本人の魅力を高めるために、キャッチライトは必要不可欠になります。
しかし、だからと言って遣り過ぎる必要はなく、さらりと実施するだけで十二分な印象度を提供してくれます。
正直申し上げますと、本記事で取り上げました『雑コラ風レタッチ術』は、写真関連の技術においては邪道以外のなにものでもなく、写真そのもののクオリティを上げるものではありません!
あくまでも、コスプレ写真とコスプレイヤーの魅力を擬似的に底上げする“手品”の類であり、純粋な写真技術ではありません。
この当たりをお間違いないよう、ご注意ください。
すみやかにサクッと拘らずに仕上げることで、返って効果的に映るという“小賢しい”テクニックがあることだけ、覚えておいてください。
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